1937-1942 Gibson HG-00 【ハワイアンコンバージョンの改造・調整】

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HG-00

1937−1942年に生産されていたハワイアンギターとの事です。
L-00のハワイアン仕様という事でしょうか。

ネックは太いと言われていますが、個人的には古いアーチトップなんかとそう変わらないと感じ、普通の奏法にも問題は感じません。
ネックの太さで音も物凄く変わってきますので、このギターの個性にも一役買っている様に感じました。

今回はそんなHG-00をお預かりしておりますが、個人的にはかなり好きな鳴りです!

ただ、お客様は『なにか違和感を感じる』との事で、お送りいただきました。


違和感

元々はハワイアンなのでナット・サドルを高くとったスライド向けのセッティングです。
それを低くして普通に弾ける様にしてあります。
いわゆるコンバージョンというのでしょうか?

お預かり時の弦高は12フレットで3mm弱と決して低くはないですが、スケールが短い事からテンションもきつくなく弾きにくさは感じません。

ただ、もう少しフレットノイズだとかの雑味も欲しいとの事の様です。

僕が一番気になったのはイントネーション。
スライド前提なのでサドルが真っ直ぐなのですが、押弦ポジションを上げていくにつれてチューニングが気持ち悪くなります。
正直なところ、傾きのついたサドルだと弦毎のイントネーション調整をしなくても許容範囲かと思ってますが(ギターなんで割り切りも必要です)、ハイコードを押さえるとちょっと厳しいかな?という感じが有りました。


さて・・・

さてどうしましょう。

まずは弦高を落とす事を考えます。
サドルの高さもブリッジとそれほど変わりなく、サドルのみでの調整は不可。
ブリッジも削られている状態です。

オクターブの調整をするには、サドルをこの位(下画像)傾ける必要が有りそうです。

しかし、パールドットがございます。そしてその下にはネジがございます。

ハイ置きで弦高が高い状態ならネックリセットという手も有りますが、現状ではネックの状態は良好。ボディに乗る指板(12フレット以降)も反り上がっている状態でもないです。
ここで、弦高調整のためにネックリセットをしてしまうと、ネックジョイント付近からへの字に指板が曲がる状態になります。(それも結構極端なへの字になりそうです。)
トップの平面的な変形も現状でも確認は出来ますが、これは80年間のかけて出来たもので今は落ち着いてます。下手に無理な力をかけてしまうと最悪はメンテナンス続きの年月が予想されます。(例えば、トップが指板に引っ張られて弦高が変わるだとか、割れるだとか、色々)
現状で落ち着いてる部分には手をかけないのが良い様に思いました。


方針決定・開始

お客様とご相談をし、ブリッジを更に削って、サドル溝も切り直す事に。
いきなり重リペアをする前に出来る事をするのが得策かと思われます。

パールを外します。いや外れなかったので壊します。
接着剤で埋まってました。

ブリッジのサドル溝は至極浅いです。
故にガッチリ接着されてます。取れませんが、なんか壊したくない。
どうせ使う事は出来ないんですが、なんか壊したくない(笑)
ワイパーブレードの芯を更に薄く削ったものを使って、少しづつ剥がしました。

接着剤が噛んだ状態での接着でしたので、これが正規の方法でサドルが装着されると音質向上にも期待できそうです。(ただし、この噛んだ状態の音が好きだった場合には、『音が変わってしまう』という事も言えます。音は個人の好みでしか有りません)

何故か後回しにされたもう一つのパールドットとネジも外します。

多少。
本当に多少ですが、ブリッジに余裕は有ります。

サドル溝は深い部分でも1mm強程度なので、その部分がなくなる程度までなら、溝の再切削を考えても厚みを変えても大丈夫と判断。

そして、大胆かつ繊細に削りました!!
サンディングブロックがボディに当たってしまうと目も当てられませんので、保護は必要です。

この後、パールドットとサドルの位置関係やら、ネジ止め部分なんかの事を考えながら進めていきます。

つづく・・・


溝切り

溝切りします。
オクターブはこの角度が良い感じです。
やはり、ネジと干渉しますね。

ネジは後に考えますので、溝切り!!
これがまた結構怖い。取り返しがつかないので慎重に。

ロングサドルの形状までブリッジの端を薄くするのは強度的に怖いです。
なので、通常形状のロングサドルにします。
いっそ普通の長さでも良いとは思ったのですが、ぱっと見の雰囲気はオリジナルの長い方が良いですね。


各種加工

この状態でネジを仕込むと、頭がブリッジよりも出っ張りますので、ルーターで彫ります。
パールのキャップも取り付けるので、大きさの異なる段付きの穴が必要。

こちらは試しにパールを軽く置いてみた状態です。


画像ではちょっと分かりにくいかもですが、6弦側のパール部分は後方にオフセットしています。ビス位置は変えずにパール部分がちょっと後ろになってます。多分、これで違和感は感じないはずと信じて進めてます。


サドル製作

キャップは最後にしっかりハメるとして、、、まずはサドルを作ります。

ブリッジ厚の関係でサドル溝はそれほど深くは出来ませんでしたが、バッチリな感じです!!

書く必要も無いのですが、なぜ両端がロングサドルの通常の形状じゃ無いかと言うとですね、同じ深さでサドル溝を切ってしまうと、ほぼブリッジ全体に及びます。
長すぎるロングサドルになります。
強度的にもこちらの方が安心ですね!
しかも、今後の高さ調整も容易に行えます。

高さとイントネーションを見るのに、捨て駒を使って目安を出しました。

6弦のみ『弦の巻き部分』がサドルに乗っちゃいそうです。(元からその傾向が有りました)
これはブリッジが薄くなった影響と、ブリッジプレートの厚みの関係からです。
こういった物を使って巻き部分を遠ざけます。

これは『音が非常によくなる!』というオカルト的な目的では有りません。
恐らく音が良くなった!とかピッチが良くなった!と実感出来る場合は、この『巻き部分』がサドルに乗っていたのでは無いでしょうか?もしくはプラシーボかな?
でも、ボールエンドをこの球でしっかり押さえている事から、ボールエンドの変な共振は抑えらる期待は有りますかね。
『変な音がする!』ってお持ちいただいた際に、このボールエンドが共振していたなんて事も何回か有りました。(これは張る時の弦曲げで解消されます)

ちなみに、この追加ボールは結構な金額です。
でもこれってあれ!

ビーズヘッドニンフで検索下さい(笑)

弦の穴のバリ取りをしたり、穴のテーパー調整をしたり、弦溝を切ったりしました。


完了!!

何度か調整し、弦高も音も良い感じになったので、パールをはめました。
違和感は無いかと思います!!よね!?

弦高もかなり下がり、音的にもご要望にあった状態になったのでは無いかと思います。

そして、この程度の余裕がございますので、今後の調整も容易かと思われます。

そいて、、、しばらく弾かせていただいちゃいました!!
気持ち良い音で、自然と体がギターを離さない。
久々にブルースを奏でる良い時間をいただきました!!

御用命・御閲覧有難うございました!!


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